貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
 どうして本物の自分が必要とされず、劣化コピーが求められているの。
 みんな似ていると言って、そのことでもてはやし、だけどすぐに興味をなくす。

 自分だけを見てほしいのに、双子であることこそが特別であるかのように言われることが多かった。
 うとましかった。自分だけを見てほしかった。

 迅は自分を百合花と見分けた。だがそれは自分を見たわけではなく、百合花ではないという消去法にすぎない。

「どうしてあいつばっかり……!」
「百合花さんをどこへやった」

「男と駆け落ちでもしたんじゃない?」
 せせら笑うようにららかが言う。

 が、気迫は迅のほうがまったく上で、目が合っただけでららかは(おのの)いた。
 まさかこんなにすぐにバレるとは思わなかったし、迅の圧がすごい。

「百合花さんを監禁しているなら刑法第220条、三カ月以上七年以下の懲役だ。ケガをさせたら傷害罪、刑法第204条、十五年以下の懲役または五十万円以下の罰金。お前が百合花さんになりすましてなにかをしているなら、場合によっては信用棄損罪、刑法第233条、三年以下の懲役、または五十万円以下の罰金だ」
 とうとうとまくしたてられ、ららかはさらに怯む。

「早く居場所を言え!」
 怒鳴られ、ららかはすくんだ。
「私はなにも知らない!」
 ららかはとっさに逃げ出す。
 迅が追い掛ける。
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