貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「産むだけで親になれるわけじゃない」
 迅が言う。
「生物学的には親だ。だが、愛をこめて育てる、それができてこそ本当に親と言えるのではないのか」
「あら、たまにはいいこと言うわね」
 そばで聞いていた春子がまぜっかえす。

「親子の縁を切る法律はない。が、決別はできる」
「な、なにを言うのよ!」
 英里子は動揺した。百合花は永遠に自分の支配下に存在し、逃げるわけがないと思っていた。なのに今、所有権が奪われようとしている。そんなことが許されていいわけがない。

「百合花、戻ってきなさい!」
 怒鳴られて、百合花は震える。
 その肩をしっかりと迅が支える。

「言いたいことがあったら言うといい。大丈夫だ、俺がいる」
 彼のまなざしに包まれ、凍えそうな胸に温かなそよ風が広がる。
 百合花は頷き、英里子をまっすぐ見た。
 英里子ににらみ返されてひるむが、負けないように目線をはずさない。

「奥様、私を産んでくれてありがとうございます」
 述べられた礼に、迅は軽く驚いた。英里子もまた意表をつかれて目を丸くする。

「私、最近まで『産んでくれてありがとう』なんて思いませんでした。つらいことばっかりで、世の中の人たちがお父さんやお母さんに『産んでくれてありがとう』って感謝していることに共感できませんでした」

「なんて恩知らずなの!」
 英里子が怒鳴り、百合花はまた震える。
< 125 / 135 >

この作品をシェア

pagetop