貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
 が、なんのことはない、天使のかっこうの女の子がふたりいるだけだ。
 黒髪はまっすぐに流れ、目がぱっちりしている。白いふんわりしたワンピースに天使のような羽を背負っていて、それがよく似合っている。
 どちらも同じ格好だというのに、不思議とひとりだけが輝いて見えた。華奢で儚げで、守ってあげたくなる。

 ふらふらと歩き出した迅の肩を、ぐっと掴む手があった。父だ。
「どこへ行くんだ」
 とっさに迅は答えられない。女の子を見に行こうとしたなんて、そんな男らしくないことは言いたくない。

「なんでもない」
「だったらここで待っていなさい」

 父親は誰かと話をし始め、隣に立つ兄はしたり顔で頷き、母はどこかの女性と話し込む。開業がどうとかプレオープンだとか難しい話をしている。
 迅にわかるのは、おいしい料理が出されるのはもう少し先だということだけだ。

 退屈をもてあました迅は、そーっとその場を離れて庭の探検を始めた。ちょっと行ってすぐ帰って来る、そう思っていたから誰にも言わずに歩き出す。
 女の子ははもうどこかへ行っていた。探すほどの興味もないので、予定通りに庭の探検を続ける。

 奥には白いユリが咲き乱れ、陽に美しく輝いていた。
 こんなに群生しているユリを見るのは初めてだった。凛として立ち、みずみずしい。濃いユリの匂いにむせ返りそうだ。

 ぐすん、と鼻をすする音に気付いてそちらを向くと、庭の端っこ、螺旋階段の下で天使のひとりがしゃがみこんで静かに涙を流していた。
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