貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
 ららかはそんな辻褄合わせまで考えてはくれない。考えるのは百合花の仕事で、どういう選択肢を選んでも怒られる未来しか見えない。身代わりを断ればららかになじられ、身代わりになって『百合花』がいなくなれば母にしかられ、身代わりがバレれば家族全員に叱責されるだろう。

「お見合いはママが一緒に行くから、バレないようにちゃんとやるのよ」
「……わかりました」
 明日の夜ごはんは『百合花』が買い物から長時間帰って来なかった罰としてきっと食べさせてもらえない。一食だけですめばいいけれど。百合花は陰鬱にうつむいた。



 お見合いの当日、百合花は朝から緊張していた。
 ららかは八時にはこっそりと家を抜け出し、百合花は指定された衣装を着て、ららかの化粧品で初めてのメイクをした。

 どうしたらいいのかわからずにネットで動画を見て見様見真似で化粧をしたが、上手にできた気はしなかった。
 ららかの部屋を出て階下に降りると、上機嫌の英里子がリビングにいた。

「今日はメイクが控えめね。お見合いだからそれくらいがいいかもしれないわね」
 気合を入れている英里子は入れ替わりに気づいていない様子だった。

 待ち合わせは十二時で、予約しておいたハイヤーで英里子とともに向かう。父は仕事で同行しない。
 ホテルは横文字の名前の高級ホテルだった。ハイヤーが車寄せに止まり、百合花は緊張しながら車を降りる。
 入口に制服の男性が立っているのがさらに高級感を感じさせ、慣れない場所に落ち着かない。

 英里子は慣れた様子で歩いて行くから、百合花は慌ててついていく。
 十五階までエレベーターで行くと、グレージュの絨毯が敷かれた廊下に出る。
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