貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「今日はご一緒できて嬉しく思います」
 英里子と春子が社交辞令を交わしながら席につき、百合花もびくびくとテーブルに歩み寄る。座るときに店員が椅子を押してくれるので驚いてバランスを崩し、倒れるように座った。

「どうしたの?」
 英里子にたずねられ、百合花は黙って首をふる。高級な店のルールに慣れてないなんて言えるわけがない。

「緊張してらっしゃるのかしら。私も緊張していますの」
 ほほ、と春子が笑う。
「そうですね」
 英里子が調子を合わせて微笑した。
 迅は無表情のままだった。

 百合花は美しく立体的に折り畳まれたテーブルのナフキンを見つめる。これを広げるのは乾杯が終わってからだったはず。
 昨夜、スマホでマナーを調べておいたが、付け焼刃の知識でどこまでできるのだろうか。

 主に英里子と春子が会話をして、百合花はたまに頷くだけ、迅に至っては質問に対して気のない返事をするだけだった。
 つまらないと思われてるかな。気に入られないといけないのに、どうしよう。

 気持ちばかり焦って、だけどボロが出るといけないと思うと何も言えない。
 提供される食事は一級品だが、緊張している百合花には楽しむ余裕がない。

 小食な百合花は食事の量にも戸惑う。普段は英里子に節制されてあまり食べられない。家事を一手に引き受けているのに、働かざるもの食うべからず、と百合花にはららかの半分しか与えない。英里子もららかも仕事をしていないというのに。
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