貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
 いつか助けてくれる人が現れるのを夢に見ていた。
 だが、まさかここで彼がそう言ってくれるなんて。

「今、君は苦しいんじゃないのか」
 自分より苦しい人なんていくらでもいる。
 だけど自分だってつらい。苦しいって言いたい。

 母と姉の罵声に怯え、きまぐれに振るわれる暴力に怯える毎日。
 それが当たり前だった。
 だが、それこそが苦しくて悲しい。

「話してくれ。俺は君を……君のような人を救うために弁護士になったんだ」
 真摯なまなざしはどんなに言葉を尽くすより雄弁に彼の心を語り、百合花の胸にしみていく。

 彼の姿にかつて会った少年が重なる。
 彼は、自分を助けるために弁護士になると言ってくれた。
 まるであのときの彼が成長して目の前に現れたかのようだ。

 いつも夢見ていた。
 探していた。やっと見つけた。君を助けに来たよ。
 あのときの少年がそう言ってくれたなら、どれだけ嬉しいことだろう。

「話すにも勇気がいるかもしれない。あなたには言う自由も言わない自由もある。強制はしないし、今は詳しく言わなくていい。ただ一言、助けてと言ってくれれば俺はそのために動く」
 百合花の心が、風に吹かれた花のようにふわりと揺れる。

 助けるなんて、今まで誰からも言われたことはなかった。

 自分に自由があるなんて、思いもしなかった。いつも自分は英里子やららかのおもちゃであり、奴隷だ。彼に助けを求めたら、彼女らから解き放たれるのだろうか。
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