貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「最終的には母親と姉の接近禁止を取るが、そのためには裏付けの証拠が必要だ。それまで時間を稼ぐ必要がある。数日したら俺と君が婚約したとあちらに伝える。滞在中に恋に落ちて婚約した設定で、君がこちらに滞在する正当な理由とする。君の父は俺の父の会社とのつながりがほしいだけだから、怒るどころか喜ぶだろう」
「そう……でしょうか」
 普段から顔を見ない父。たまに見るときにはむすっとしていて、喜ぶ姿など想像もできない。

「まだ揺れているようだな」
「仕方ないわよ。急に家を離れて不安でしょう?」
 春子に言われて、百合花は頷く。

「あなたのしたいようにしたらいいのよ」
「したいように……」
 そんなことが許されるのだろうか。だが、そもそも自分はなにをしたいのだろう。長いこと未来を封じられていたから、なにをしたいのかすらわからない。

「ゆっくり考えればいい。時間は俺が作ってやる」
 頼もしい迅の言葉に、百合花はまた眩しく彼を見た。



 翌日、目が覚めた百合花はいつもと違う部屋に戸惑った。
 それから前日のことを思い出し、ため息をつく。

 本当に深空家に泊ってしまった。
 客室にはホテルのようにお手洗いも浴室もついていて、こんな好待遇を受けていいのだろうかと疑問に思う。

 春子が買ってくれた服は高い物ばかりで、本当に着ていいのか不安になる。
 それでもほかに着るものがない。着替えてからそっと一階に降りた。

 勝手に家の中を歩いていいのかと迷いながらもキッチンに行く。
 せめて朝食を作ってお礼の代わりにならないだろうか。
 だけど勝手に食材を使って怒られないだろうか。
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