貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「ひとりで考えたい案件があるので、申し訳ありません」
 迅はすげなく断り、通り過ぎる。
「だから言ったじゃん、断られるって」
「だって……」
 女性たちがぼそぼそ話す声が聞こえたが、迅は気にせずカウンターへ行く。

 Aランチのソールズベリーステーキをスマホで購入済みだった。ソールズベリーステーキはハンバーグにしか思えない。牛ひき肉100パーセントで玉ねぎを使わないという。
 これをハンバーグと称しても法的には問題ないな、と考えて苦笑が漏れる。なんでも法律に照らして考えてしまうのはもう職業病だ。
窓際の席についたときだった。

「ここ、いいか?」
 尋ねると同時にアニ弁……つまり先輩弁護士の鍵田真哲(かぎた まさあき)がBランチの牛丼セットをトレイに載せて迅の目の前に座った。迅は苦笑してそれを受け入れる。

「最近、前にも増して大変そうだけど大丈夫か?」
「大丈夫ですよ」
「案件ならいつでも引き受けるぞ」
 迅はまた苦笑した。真哲はひとつでも多くこなして上からの評価がほしいのだろう。パートナー弁護士になることを目指しているとも聞く。

「仕事しながら合気道かなんかやってるんだっけか。ただでさえ、企業法務をやりながら民事や刑事の勉強も続けてるんだろ? 担当変更は断られ続けてるのに」
「あきらめきれなくて、未練がましい男ですよ」
「未練ねえ」
 真哲はにやにやと迅を見る。
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