貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
 迅は顎に手をあててなにかを考え込むそぶりを見せた。
「その少年を恨んでいるか?」
 思いがけない質問に、百合花は首を振る。

「そんなわけないです。どうしてそう思われるのですか?」
「助けると言いながらなにもしなかったんだ」

「子どもだったんですよ。なにもできなくて当然です。大人になったら普通はもう忘れてしまうでしょうし……」
「彼は忘れていないよ。弁護士にはなったが、あのときの君を見つけられなかったんだ」
 他人のことのような、それでいて自分のことのような、そんな口調に百合花はどきどきする。
 迅はコーヒーを口に含み、それから百合花を見た。

「いつもながら、君が淹れるコーヒーはうまいな」
「ありがとうございます」
 英里子とららかにケチをつけられないように、コーヒーの淹れ方は必死に練習した。淹れたての熱いコーヒーを「まずい!」とかけられたことがあるからだ。

 彼はフロランタンも口にする。
 どきどきする百合花の前で、彼は微笑を見せた。

「こちらもうまいな」
「ありがとうございます!」
 百合花は嬉しくて、満面の笑みを浮かべて頭を下げる。

「……ずっとそうしていてくれ」
 彼の言葉に、百合花はきょとんとした。
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