貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「笑顔のままでいてくれ」
 視線に甘さが漂い、百合花は動揺した。男性からそのような目を向けられたことがなくて、どう反応したいいのかわからない。

「ありがとうございます」
 だから、うつむいてそう答えるのが精いっぱいだった。きっと彼は自分を助けると言った責任から優しいのだ。期待してはいけない。そう思うのに、どうしても胸にときめきがあふれてしまう。

「なにか困っていることはないか?」
 見ると、彼はもう無表情に戻っていた。

「特にはありません。ですが、お世話になってばかりで心苦しく思います。せめて家事をさせていただきたいです」
「だが、家事は通いの家政婦で間に合っている……ああ、そうだ」
 なにか思いついたように彼は百合花を見る。その顔はことさらに無表情を装っているように見えた。

「俺の家の家政婦になるのはどうだ? そろそろ戻ろうと思っていたんだ。給料は払う」
「お給料なんていただけません」

「ただ働きは労働基準法37条の違反だ。俺を違反者にさせないでくれ」
「ですけど」
 ここまでお世話になっていて、さらに給料までもらうなんてできない。
 必死に考えて、断る口実を見つけた。
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