貴方が結ぶ二重螺旋 ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
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猫鳥弁護士事務所についた百合花はあっけにとられた。
見上げるほどの高層だった。夏の眩しい空の下、堂々とそびえるビルのガラスがぎらりと光る。
二階建てくらいの低層ビルを想像していたから、ただそれだけで気圧される。
空調のきいたぴかぴかの通路を進む間も、自分の場違いさにおどおどしてしまった。
服は変じゃないよね。お化粧も、奥様が大丈夫って言ってくださったから大丈夫よね。
百合花は汗を拭ってそわそわと服を確認し、受付に行く。
品のある受付の女性はとてもきれいでてきぱきと話を進めてくれる。
「あちらでお待ち下さい」
受付のそばのソファを勧められて座る。
しばらく待っているとエレベーターが到着し、中から迅が現れた。
「忘れ物だと聞いた。持って来てくれてありがとう」
「いえ、奥様から頼まれたので……これです」
百合花は立ち上がり、かわいい紙袋を渡す。
迅は首をかしげて受け取り、中を見てあきれた。
「ハンカチだ。別に忘れてはいないが」
「そうだったんですか? 申し訳ありません、お仕事中ですのに」
慌てて頭を下げた百合花に、迅は安心させるように笑みを見せる。
「いや、いい。おかげで思いがけず君に会えたからな」
百合花は固まった。
君に会えたなんて、まるで会いたかったかのように聞こえる。会いたかったのはむしろ、自分なのに。