貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
 ららかはたじろぎ、威勢をなくした。
 男性から向けられるのはいつも欲望に満ちたものであり、それ以外は有り得ない……あってはならなかった。

「あんたなんで断らないのよ! 帰ってうちの家事をしなさいよ! あんたのせいでママも機嫌が悪いんだから!」
 百合花がいなくなってからやつあたりする相手がいなくなり、ららかも英里子も不機嫌に過ごすことが多くなった。おかげで家庭は常にぎすぎすしている。

「なぜ彼女が家事をする前提なのですか?」
 迅が尋ねると、ららかはむっとした。
「そんなの、一番下だからよ」
「下、とは」
 さらなる問いにららかは言葉につまり、探るように目を泳がせてから答える。

「一番年下よ、妹なんだから」
「一番年下が家事をしなければいけない法律はありません」
 ららかは苛立ちを募らせて迅をにらむが、彼は冷然とそれを撥ね退ける。

「彼女の勤労の権利を阻害し、家事を押し付けているのは人権侵害です」
 法は家庭に入らずという法格言があるが、それは基本的人権が守られてこそ成立するものだと迅は思っている。

「いちいち大袈裟な。そもそもなんで婚約で家を出る必要があるのよ、婚約だけなら、まだ結婚じゃないんだから!」
「それは当たり前のことです」
 必死の反論は迅から児戯のように返される。
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