貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「でも、私なんかに申し訳ないです」
「『なんか』ではないよ。その癖はやめたほうがいい」
「……はい」
 百合花は返事をしたが、この癖をやめられる気はしない。

「免許証はすぐに警察に遺失物届けを出して再交付を受けよう」
「はい」
 免許証があるのに再交付を受けるのは違法だ。

 が、今回は取り戻すことは不可能、実質的に紛失したも同然だ。警察に指摘されても違法性がないと抗弁できると迅は判断した。万一の不正使用を避けるためにもこのほうが有効だろう。

 結局、迅はタクシーを手配して百合花が乗り込むまで見送ってくれた。百合花は申しわけない気持ちが増すばかりだった。

***

 ららかが英里子とともに弁護士事務所を訪れたのは翌日のことだった。
 アポもなく訪れた客に、迅は不快さを隠さない。
 用件は百合花のことだったから仕方なく時間を作って開いていた第一応接室で対応する。

 入ってきたふたりは横柄にどかっとソファに座る。
 迅は百合花を思い出す。遠慮がちに座って落っこちた彼女とは天と地の差がある。

 前日にも思ったが、百合花とららかはよく似ている。髪色が違うしメイクや服装のせいで雰囲気が違うから見分けやすいが、髪色を同じにするだけで、ぱっと見では区別ができなくなるだろう。
 型通りの挨拶の間に事務の女性がお茶を出してくれた。彼女が下がったのち、迅は切り出す。
< 70 / 135 >

この作品をシェア

pagetop