貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「あなた写真を偽造したの!?」
 彼女が写真を用意して母親をたきつけたのか、と迅は悟る。
「ららかさんはホストに入れあげてそうとう貢いでいるとか」
 言われて、ららかは頬をひきつらせた。

「まだやってたの!?」
 英里子が怒鳴りつけ、ハッとして口をつぐむ。
「男漁りをしている女性は私の妻にはふさわしくないのでしたね?」
 迅はじろりと正面の母子を見る。

「それは百合花よ! 私じゃない!」
 ららかは強気に言い張る。が、迅には通用しない。
 彼女は焦れて声を荒げた。

「あんな傷物! みっともなくて外に見せられやしないわよ!」
「その程度でひるむと思われているのか。見くびられたものだな」
 迅の鋭い威嚇にららかは硬直する。

「腕の傷ごときで彼女の価値を貶められるわけがない」
 吐き捨てるような口調にはまぎれもない怒りが含まれていた。気圧されたららかと英里子はなにも返せない。

「腕の傷は姉であるあなたがつけたものだ。つまり百合花さんは被害者であり、なんの落ち度もない。(とが)を負うのは百合花さんではなくあなただ」
 法律家となり、様々な案件に接して来た。今は企業法務だが、刑事事件を担当したこともある。犯罪は憎むべきだが、今までこれほど怒りを覚える件はなかった。

 傷害としては十年の公訴時効が成立しており、損害賠償も五年の時効を過ぎている。そうでなければ今からでも彼女の代理人となって損害賠償を請求してやったのに。
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