貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「それとも、俺では君の夫には力不足かな」
「そんなことないです! とっても素敵で、私なんか……」
「なんか」
「あ!」
 百合花は思わず口に手を当てる。

 ふっと迅が笑って、百合花はその笑顔に見とれる。
 夏の空よりも強い輝きがあって、まぶしいのに見惚れずにいられない。

「こ、婚約を本物って、そのつまり……」
「結婚したい、ということだ」
 百合花は顔を赤くしてうつむいた。

 こんな突然にプロポーズをされるとは思ってもみなかった。よく知り合ってもいないと思うし、自分はとっくに彼に恋をしているが、彼に好きになってもらえるようなところが自分にあるとは思えない。

「母と仲よくしている君をみるたびにやきもきした。今日、君が母の選んだ服を着ているのを見て、正直不愉快だった」
 彼の告白に、百合花は少し戸惑って彼を伺い見る。

「実の母に嫉妬する日がくるとは、君が現れるまで思ってもみなかったよ」
 嫉妬してくれたなんて。
 百合花の胸に喜びが生まれ、広がっていく。

「それで急遽、服を買いに行った。我ながら独占欲が強い。できることなら俺の色に染めてしまいたい」
 苦笑する彼に、百合花はゆるゆると首を振った。あふれた想いに耐えきれず、傾斜していた心がぱたんと倒れこむのがわかった。

「私……染まりたいです」
 今度は迅が驚きを浮かべた。直後、百合花に手を伸ばし、ぐっと拳を握ってなにかこらえるように手を下げる。
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