貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「本日はおめでとうございます。お名前をお願い致します」
「今日の主役に名前を聞くなんて! 教育がなってないわね!」

「申し訳ございません」
 強気でなじられ、受付の女性は頭を下げる。最初に会ったとき彼女はしとやかに「今日はよろしくお願いします」と頭を下げてくれたのに、かなり印象が違う。やはり姉なのだろうか。

「確認しなくてはなりませんので、ご協力をお願いします」
「蒔田ら……百合花よ!」

「ご本人と確認できるものはお持ちですか?」
「なによ、確認できるものって」

「免許証でいいんじゃね?」
 男のささやきで不機嫌な女性はバッグの中から免許証を取り出し、受付の女性にぐいっと見せる。

 そこには確かに『蒔田百合花』と書かれていた。
 免許証なんて本人以外に持っているわけはないだろう。

 受付の女性はほっとした。百合花さんは婚約者の前ではしとやかにしているだけで、本性はこちらなのだろう。そんな人はいくらでも見て来た。

「ご協力ありがとうございます。こちらのおふた方は?」
「友達よ。サプライズの余興をしてもらうのよ。あなたは雇われてるだけなんだから黙って従いなさい」

 かちんと来たが、彼女はぐっとこらえた。こんな女と結婚するなんて、御曹司はなにを考えているんだろう。それとも政略結婚で選べなかったのだろうか。

「失礼いたしました」
 受付の女性が頭を下げると、百合花(・・・)はつんと顎を逸らし、一緒に入ってきた男たちをお供にして奥へと歩いて行く。
 受付の女性はまた受付業務へと戻り、にこやかに招待客に対応した。
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