パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
 アラスカ到着後、陣営を組み、行程表に目を通していると、隣の陣営のイタリア兵がエスプレッソをくれた。イタリア兵は陣営にエスプレッソマシンを持ち込んでいるらしい。

 千愛里と一緒に飲む、甘いカフェラテが好きだった。
 だけど、苦みの強いエスプレッソは自分の恋心とリンクした。しかも、鼻に抜ける香りはやたらと爽やかだ。

 ――やっぱり、千愛里を手放したくない。
 喉を潤しながら、伊澄は小松に戻ったら千愛里と話そうと決めた。

 しかし、すべての日程を終えて小松に戻ると、千愛里はどこにもいなくなっていた。意を決して訪れた帆風鉄工では嫌な顔をされ、門前払いに遭うしまつだ。

 ――まさか、千愛里に会えなくなるなんて。
 悲しみに暮れながら、伊澄は千愛里が好きだった空を見上げた。

『どこまでも、飛んでいける気がするんです』

 そう言った彼女の笑みが、脳裏に浮かんだ。

 きっと彼女も、この空を見上げている。自分が千愛里のためにできることは、飛ぶことだ。空を飛び、どこかにいる千愛里に届けたい。

 自分に戦闘機パイロットとしての自信をくれた彼女を、伊澄は愛し抜きたいと思った。たとえ、離れた場所にいようとも。

 伊澄がフライト前に必ず胸元のリングに口づけるのは、この想いがあるからだ。
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