パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
 どくりと、心臓が騒いだ。彼女の言葉が、先ほどまでの弱気な自分を、叱咤しているように感じたのだ。

 だけど彼女は、切なげに笑う。事情を聞くと、空を飛ぶ戦闘機に自身の心を重ねていた。

 彼女が顔を上げてくれるのなら、彼女のために、戦闘機パイロットとして空を飛びたい。
 胸の中で、そう強く思った。

 落ち込んだ時には彼女のもとを必ず訪れた。彼女はいつも楽しそうに、自分と話をしてくれる。
 その笑顔を見る度に、今日も飛んで良かったと思い、明日も頑張ろうと思えた。

 告白は嫉妬心が先走ったゆえの行動だったが、彼女の特異な宿命を知っても隣にいたいと思った。
 自分が戦闘機パイロットとして居続け、成長できているのは間違いなく彼女のおかげだ。


『このまま一緒に、逃げてしまおう』

 別れを告げられたその日、伊澄の脳裏に浮かんだ言葉だ。

 だけど、選ばれた者しか参加できないアラスカでの合同演習。国民を守るという大義名分で戦闘機に乗せてもらっている自分に、それを断ることなど出来ない。
 泣きそうなのを必死にこらえ、別れを告げる千愛里の顔が、アラスカへの道中ずっと消えなかった。
< 168 / 292 >

この作品をシェア

pagetop