パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
「お父さん、これ使っていい?」

 私はふたり分の湯飲みを手にしながら、父の方を向く。父は一瞬顔をこわばらせたが、すぐにいつものむすっとした顔で「ああ」とだけ答えた。

 湯飲みに白湯を注ぎ、父に差し出した。それから自分の分も持って、父の前に腰かける。
 すると突然、父が小さな声で言った。

「私はお前が生まれたばかりの時に抱いたら大泣きされて、育児はそれっきりだ」

 はっとして父を見た。
 一瞬、居心地の悪そうな瞳と目が合ったが、すぐにふいっと逸らされてしまう。
 それでも、父は口を開いた。

「水島が言ったんだ。きちんと、千愛里と話せと」

 父はそう前置きをすると、小さく咳ばらいをしてから続けた。

「だから、その……大したものだ」

 父の言葉に、私は父とふたりで暮らしていたあの頃を思い出した。

 父とふたりきりの毎日は、緊張だらけだった。だけどそれは、父も同じだったのかもしれない。
 母が急逝して、父も戸惑っていたのかもしれない。
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