パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
「じゃあ、また」

 短いキスを交わし、彼の車を降りた。幸せな気持ちで満たされていたけれど、私は伊澄ジュニアを落とさぬように鞄にしまい、気を引き締める。
 父に、気の緩んだところなど見せられない。

 しかし、帰宅した家は明かりがついていなかった。

「ただいま」

 鍵を開け、家に入る。中はしんとしていて、私は急に不安になった。父が日曜のこの時間に家にいないなんて、おかしい。

 いや、早とちりはやめよう。父だって出かけることくらいあるだろう。
 深く考えずに夕飯の支度をしていると、しばらくして父が帰ってきた。

「おかえりなさい、今すぐご飯を――」
「千愛里。お前はまだ二十五だ」

 キッチンにやってきた父は私の言葉を遮って、それだけ言うとくるりと背を向ける。

 一瞬だけ見えた父の顔は、いつものように無表情で怖い。だけど、どこかこわばっている気がした。
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