パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
 なんのことか分からずきょとんとしていると、彼はそっと頭を上げた。

『やっぱり、聞いていないか』

 彼はそう言うと、普段は笑い皺の多いその顔を深刻そうに歪ませた。

『実は、贔屓にしていた機械メーカーが倒産してしまったんだ。必死になって新しい契約先を探していたところ、神崎電機工業が名乗り出てくれた。だけど、先方は自分の息子と千愛里ちゃんの結婚を望んでいるんだ』

 私は目をしばたたいた。しかし、思い当たる節はある。
 昨夜の、父の遅い帰宅。意味深な言葉――。

 だけど、唐突な話に私はなにも言えない。固まったままでいると、水島さんは再び口を開いた。

『社長も、必死に頑張っていたんだよ。奥さんが亡くなってから、ずっとひとりで、色々なところに頭を下げて。この会社を維持するために、従業員を路頭に迷わせないようにってなんとか大口の取引をつかんだけれど、まさかそこが倒産してしまうなんて』

 そこまで言うと、悔しそうに口をつぐんだ。だけど、一呼吸おいて私をじっと見る。

『千愛里ちゃんには、苦労をかける。でもどうか、帆風鉄工を救ってほしい』
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