パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
 水島さんの悲痛な視線が、痛い。
 私は自宅の隣にある、帆風鉄工の本社工場に視線を向けた。小さな工場だけれど、従業員は三十人ほどいる。

『せめて、顔合わせだけは受けて欲しい。頼むよ、千愛里ちゃん』

 再び水島さんに頭を下げられ、『お話は分かりました』とだけ返して彼と別れた。
 水島さんの悲しそうな、それでいて期待するような視線が強烈に印象に残っている。

 だけど、唐突に結婚なんて言われても困る。私には、伊澄さんがいるのだ。
 それに、会社を救ってほしいと言われても、倒産だなんて信じられない。

 父からはなにも言われず、一週間が過ぎた。だけど、表情を変えない父の食が、日々細くなっていくのを感じた。


 そして、今朝。唐突に、結婚相手に会いに行くと告げられた。

『顔合わせだけでも』

 そう言った水島さんの悲痛な視線を思い出したら、逃げ出すこともできずに父についてきてしまった。
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