パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
 しばらくそうして見つめ合っていたけれど、伊澄さんはふと腕時計に目をやる。それから、苦悶の表情で首を小さく横に振った。

「すまない、もう行かないと。戻ってきたら、もう一度話そう」
「そんなこと無理です。もう二度と、私の前に現れないでください。私の新しい生活を、邪魔しないで」

 まっすぐに向けられた視線が痛くて、顔を背けた。震える声でそう言うと、彼は立ち上がり、私の横を通り過ぎる。

「俺はそれでも、千愛里が好きだ」

 去り際に小さくこぼされた声が、ひどく頭に響いた。

 やがて彼の足音が聞こえなくなり、私は自分の胸に手を置いた。

 泣いてはダメだ。
 そう思えば思うほど、胸が苦しくなった。彼と別れると決めたのは、私なのに。

「ご注文のカフェラテを、お持ちしました」

 空気を読んだのか、店員さんは今さら注文した商品を持ってくる。

 これでよかったんだ。
 私はそう自分に言い聞かせながら、熱くなった目頭を冷ますように、時間をかけてカフェラテをいただいた。
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