パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
 彼への想いがあふれる前に、この場所から立ち去りたい。そう思って口から飛び出た言葉だったけれど、事実でもある。

「子どもがいるのか?」

 なぜか彼の声が途端に小さくなる。私は振り返らずに、小さく頷いた。

「では、急ぎますので」

 私はそのまま従業員扉の向こうに逃げ込んだ。
 ぱたんと扉を閉めると、体から力が抜け、よろよろとその場に座り込んでしまう。

 胸に手を当てた。まだ、心臓がバクバクしている。
 まさか、本当に彼がいるなんて。

 何度か深呼吸をして、心を落ち着けた。
 いつまでもここにいるわけにはいかない。子どもたちのお迎えの時間が迫っているのだ。
 私はもう一度深呼吸をしてから、従業員用の出入口へと向かった。


 子どもたちを迎えに行き、その足でいつものようにスーパーに買い物に向かった。

 どんなに動揺することがあっても、いつもと同じ今日をこなさなければならない。
 母親だからそうあるべきだと思うし、今はそうしている方が彼のことを考えなくて済む。
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