DEAR 2nd 〜Life〜




新しいケータイはネイビーブルー。




いつもなら、あたしにとってケータイを代える事は一大事だった。




どれにしようか数日間はパンフレット見て悩む方だし、見た目とか機能とか……。




実際に店頭でも、一通りの機種を物色して決めるくらい。





───…けど、今回は特に悩みも迷いもせず、アッサリとこれに決めた。





───決めた理由は、“どうでもいい”。






理由になんかなってないかもね。





でも本当にどうでもいい。






────ピッ……。





まだ誰にも知らせていない番号とアドレス。






「────……」






このまま………




こっちから“ケータイ代えました”って連絡しなきゃ、誰とも繋がらないんだろうな………。





ってか……




誰にも知らせたくないや……。






「───…………




これじゃ代えた意味ないな………」






────カチッ…





さっき移し変えてもらったメモリを見て、ハァッと溜め息を吐いた。






─────その時だった。










“笹原 ナナ”









「────……あ……」





電話帳のメモリを開いた時、出てきたのがナナのメモリだった。






────……ナナ……






………ナナの名前をディスプレイ越しに見た瞬間、無性に彼女が恋しくなった。





……ナナは今頃どうしているんだろうか。





元気でやってるのかな……






─────…







『───彩~っ!!!!おっはよー♪』




『───ナナっ!おはよー!!



ねー聞いて、昨日さぁ……』





『なぁにー?ノロケなら聞かないよー』





『違うよ~!!あのね、昨日ね………』






──────………






「………楽しかったなぁ………高校生は……」





友達が───……




ナナがいたもんね……。





小、中、高校生で、自分が今みたいな環境に晒された事なんて一度もなかった。





“学校に行く”事も当たり前で、




“友達”がいて当たり前で、




“毎日”を平凡に過ごす事も当たり前で───……




その“当たり前”が、今のあたしにはどこにもない。






“見当たらない”んじゃなくて────……






───もう、完全に見失ってしまった。




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