DEAR 2nd 〜Life〜





「───…さむっ…」







気が付けば、もう朝は秋ではなく、どちらかと言うと冬に近い寒さを帯びていた。






───…キラキラ……






朝日が川面に反射し、

あたしはその光に目を細めて朝岡さんのマンションに向かった。






…もう…




ここに来たのも半年前になるんだなぁ…。





駐車場に止められたシルバーのエスティマを見て胸がざわつく。






……あの時、あたし確か酔っ払ってて朝岡さんが迎えに来てくれたんだよね。






朝岡さんはあたしと一晩中語り明かしたこと、覚えてるかなぁ…。






外国で育った意外な生い立ちや、




初めて見たあなたと瓜二つな生前のお母様の写真。





紅の結成秘話。





作曲してる真剣な横顔。





口ずさむだけで微笑んでしまう澄んでる歌声とか





楽譜に走る達筆な音符。





同じベッドに入った瞬間に浮き出た、矛盾してるワガママ。




それに答えて笑ってくれたあなた。





ドキドキしたのに可愛い顔して先に寝られちゃった事。





朝起きた瞬間に意地悪されて付いた甘いキスマーク。





超手抜きな朝ご飯を笑って食べてくれた事。





“明日も来れる”って単純に浮かれてた朝岡さんのマンション。






───…でも




“その明日”は来なかった。






告白はおろか、デートさえも叶わなかったね。






“最後にあんな幸せな時間を過ごしたから罰が当たったんだ”って




ムリヤリな理由付けて諦めていたよ。





……ここにもね、もう一生来れないって思ってた。






それでもあなたはあたしの元へ来てくれた。





きっと話し合おうとして来てくれたんだよね。




チケットを届けにも来てくれたよね。







「───今度は……




あたしの番だよね……」






────…カツ…






あたしは扉を見上げた。









┏────────┓





    朝岡





┗────────┛









「…緊張する…」







あなたに繋がる扉。





ここを開けば何か変わるかな?





…ううん。





───いい加減変わらなきゃ。







────スウッ…。






あたしは息を止め、







────ピンポーン…。






小刻みに震える指でインターホンを押した。



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