DEAR 2nd 〜Life〜




「……ううん…



実はあたしもちょっと風邪気味だったりして…」




「え、マジで?」





「……そう───………ふ、…ぶぇっくしょん!!!!」





返事をする暇もなく、続けてあたしはくしゃみを連発した。





……まずい。




このくしゃみ、ホントにタチ悪い。







「……いける?」





「うん、大丈夫…」





ぐすぐすと鼻を啜り、あたしは朝岡さんに笑顔を見せた。





……でも内心はかなりショック。





せっかくのキスのタイミング、完璧逃しちゃった。









すっかり壊れてしまった雰囲気に自己嫌悪。






プラス、かなりテンパった挙げ句…








「……季節の変わり目だからかな?



あのライブの日からいきなり寒くなったもんね~…。」






……………





────って!!!!!






つい口から滑った言葉に、笑顔がフリーズ。









「────…え?」








………し、しまった。






朝岡さんも今のあたしを見逃せなかったのか、驚いた様子でまばたきを繰り返している。







───…や、ヤバい。










「───……彩…





もしかしてライブ来てくれてたん……?」






信じられないとでも言うように、朝岡さんの目があたしに訴えてくる。







「……う、うん…」






コクリと小さく頷くと








「…え……でも席にはおれへんかったやんな……」







────…ズキ…






あたしも、何気なく言われた今の一言で気付かされる。








朝岡さん……





ずっとあたしを待っててくれたんだ──……









「……あ……



ほ、本当はね、ちゃんとライブの最初からいる予定だったんだよ。




でもちょっと色々合って間に合わなくて…」






「色々って…」





「……んーと…



まぁ……うまい具合に部屋に閉じ込められちゃって……出られなくて…」





「…閉じ込められた…?」





「……あはは……




でもあたし、朝岡さんの声がどうしても聞きたくて……




窓から木に飛び移って脱出して、でも足ぐねったりタクシー渋滞してたりでもう大変で……」






「……」





「……どうにか間に合って、ラスト一曲だけ立ち聞きして聞いてたの。





どうしても…




朝岡さんに会いたくて……」



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