DEAR 2nd 〜Life〜




「…ごめんね…せっかくチケットくれたのに…



ほとんど曲聞けなかったし、歌ってる姿見れなかった…」









本当はね、カッコ悪いよこんな話するの。





したくないよ、言い訳なんて。






……ほら。





笑って言ったら余計惨めになってきた。








見たかったよ。






全部見たかった。






朝岡さんが熱出してまで必死で頑張ってた姿、最初から最後まで見たかった。










────ポタッ…。









「…あれ…やだな…」








幸せなのにな。






どうして────…










─────ふわり…









「…朝岡さん…」








温かい腕。




大きな手のひら。




今を刻む心臓の音。








「……いいんやって。




間に合ったとか間に合ってないとか、俺は気にしてないよ。




それよりも……





俺は、彩がそこまでして来てくれたのが嬉しい。






ありがとう、彩──…」









─────ポンッ…









ただ。





ただ抱き締められて、

頭を撫でられてるだけだ。






ただ、それだけだ。







ただ─────…、









「───…っ~~~~~~~っ……ふ……っ」








“ただ、これだけ”。








そう、あたしは





“ただこれだけ”を望んでいた。






幸せなのに、涙が溢れる理由。




この涙が示す意味は










“あなたが好きだから”










「……っ、く」






「よしよし、そんなに俺の声が聞きたかったんやったらこれからいつでも歌ったる♪」





「うっ、うん…」






「だから泣かんでよろしい。






……あと5秒で泣き止まんかったらキスすんで。」






「え!?!?」









「───…はい時間切れ。」






「!!ちょ─…っ!!」













─────………











朝岡さんとのキスはどうやらBitter & Sweet。








「……彩、キス下手」





「…っ!?!?」






Bitterな苦い意地悪と








「──…そこがまたいいんやけどね。慣れてない感じで。」






「…っ…ん…」







Sweetな甘いキスで






いつも予期せぬ時に、苦くて甘いキスが降ってくる。




< 304 / 475 >

この作品をシェア

pagetop