DEAR 2nd 〜Life〜






「……あぁー、ダメだ。

ダメダメ。」






ここで一回泣いちゃうとストップ利かない。





それに渡すの忘れたあたしにも問題ありだ。







……ってか甘かった。







さっさと渡してたら、今頃朝岡さんの笑顔だって見れただろうに。







───…って…







「だからこういうマイナスな考えがダメなんだってば…」






プルプルと首を振り、邪気を祓っていると。







────…♪、♪♪~…






バッグから聞こえる着信音に涙が止まった。










【着信;ゴローちゃん】










ゴローちゃんから連絡なんて、思い当たる節はただ一つ。







─────…ピッ。







「…はい」






『───あ、もしもし彩ちゃん?



ごめんね、今日は上手く純にケーキ渡せた?』






「…」







ゴローちゃんの弾む声で、あたしは返す言葉が見つからなかった。







────…そう。





今朝作ってたケーキは、

お菓子作りが苦手なあたしの為に、わざわざゴローちゃんが簡単に作れるレシピを教えてくれて。






───…それを必死に見ながら作ったのが、あのシフォンケーキだったんだ。






「…あの、」






『いや、純がさっきからヤケに上機嫌でさ?




だからうまくいったのかなぁって気になって。




ほら、アイツなかなか口堅くてさ…』






「…」








───…朝岡さん…。






会えただけでそんなに笑ってくれてるんだよね…?






このシフォンケーキ渡してたら、もっと笑ってくれてたんだろうか──…








────…悲しい。









「───…ゴローちゃん、あの…」





『ん?』






「───…せなかった…」






『…え?』







「───…ごめっ…





わ……






───渡せなかった…っ」










堪えきれなくて。








小さく悲鳴をあげるかのようにそう叫び、あたしはゴローちゃんに今起こった事実全てを話した。









『…どうして…』







虚ろげな声が、電話越しに当惑したゴローちゃんの表情を連想させる。







「…あ、あたしが渡すの忘れてたのが一番悪かったんだけど……




ごめんね…せっかくレシピまで教えてもらったのに…」


< 328 / 475 >

この作品をシェア

pagetop