DEAR 2nd 〜Life〜
「……あぁー、ダメだ。
ダメダメ。」
ここで一回泣いちゃうとストップ利かない。
それに渡すの忘れたあたしにも問題ありだ。
……ってか甘かった。
さっさと渡してたら、今頃朝岡さんの笑顔だって見れただろうに。
───…って…
「だからこういうマイナスな考えがダメなんだってば…」
プルプルと首を振り、邪気を祓っていると。
────…♪、♪♪~…
バッグから聞こえる着信音に涙が止まった。
【着信;ゴローちゃん】
ゴローちゃんから連絡なんて、思い当たる節はただ一つ。
─────…ピッ。
「…はい」
『───あ、もしもし彩ちゃん?
ごめんね、今日は上手く純にケーキ渡せた?』
「…」
ゴローちゃんの弾む声で、あたしは返す言葉が見つからなかった。
────…そう。
今朝作ってたケーキは、
お菓子作りが苦手なあたしの為に、わざわざゴローちゃんが簡単に作れるレシピを教えてくれて。
───…それを必死に見ながら作ったのが、あのシフォンケーキだったんだ。
「…あの、」
『いや、純がさっきからヤケに上機嫌でさ?
だからうまくいったのかなぁって気になって。
ほら、アイツなかなか口堅くてさ…』
「…」
───…朝岡さん…。
会えただけでそんなに笑ってくれてるんだよね…?
このシフォンケーキ渡してたら、もっと笑ってくれてたんだろうか──…
────…悲しい。
「───…ゴローちゃん、あの…」
『ん?』
「───…せなかった…」
『…え?』
「───…ごめっ…
わ……
───渡せなかった…っ」
堪えきれなくて。
小さく悲鳴をあげるかのようにそう叫び、あたしはゴローちゃんに今起こった事実全てを話した。
『…どうして…』
虚ろげな声が、電話越しに当惑したゴローちゃんの表情を連想させる。
「…あ、あたしが渡すの忘れてたのが一番悪かったんだけど……
ごめんね…せっかくレシピまで教えてもらったのに…」