DEAR 2nd 〜Life〜
慌てて通話ボタンを押し、強くケータイを耳に押し当てる。
『────…あ。
もしもし彩?』
──────キュッ…
耳に入った声が、あたしの胸でやわらかい波紋になって広がっていく。
『───ごめん、電話遅くなって。
講義長引いてさ…
さっきやっと終わったとこ』
……講義室から出たとこ、なのかな?
周りがザワついていて、
朝岡さんの声を聞き取るのに必死だ。
「……って事は朝岡さん今からお昼?
ごめん、あたしまたかけ直──…」
『───え?
あぁ別にいいって。俺次の講義ないし♪』
「…え…ほんと?」
『うん。嬉しい?』
「…嬉しい…」
『俺も嬉しい』
───…ついつい顔が緩んで笑ってしまう。
“お昼休み”に朝岡さんが電話をくれるようになったのはつい最近の事。
さっきみたいにちょっぴり寂しくなったりした時、
『───つか彩。
俺にいつナース姿見せてくれんの?』
「───はっ…!?!?
ばか何言ってんの…っ」
『……いや、俺ずーっと期待して待ってるんやけど。
……真面目に。』
「まっ真面目になんか待たなくていいって!!!!
朝岡さんの前では白衣絶対着ないもん!」
『はっ!?!?何それ!!
俺の夢をそんな簡単に砕かんといてくれ!』
「どうせエロい夢でしょっ!!朝岡さんのエッチ!」
『違うって!男のロマンやねんって!!』
「どこがっ!」
───…こうやって。
寂しい時間を、すぐに笑える時間に変えてくれる朝岡さんとの電話が好き。
……ってか、ううん。
朝岡さんが好き。
…そんないつものように、ささやかな幸せを感じていた時。
『───…てかさ。
聞いた。吾郎から。』
「…え?」
『俺の為にケーキ作ってくれたんやって?』
「…あ…えっ…と…」
どう返事をしたらいいか分からず、言葉に詰まる。
すると
『────兵器。
投入したから。』
「え?何そ─…」
「きゃぁぁぁあ!!!!!!」
「!?!?」
言い終わらないうちに、あたしの耳に悲鳴が聞こえてきた。