DEAR 2nd 〜Life〜
「───彩ちゃん、
冷たい麦茶で大丈夫?」
「あっ、はい!
ありがとうございます。」
汗びっしょりの身体をタオルで拭いながら、カーテン越しにそう返事をして。
あたしはカバンから、まだ着なれない白衣を取り出して着替え始めた。
───…数週間前。
受験生とは言えど、
やっぱりバイトを辞めると財布事情は厳しくて。
それこそ前みたいにガッツリは働けないけれど、軽いお小遣い稼ぎでこの歯医者の助手を始めた。
歯医者って未経験だし、医療系だし、器具の名前もカルテの見方も打ち方も、何にも分からなくて。
頭がパンクしてテンテコマイになっても、陽子さんが優しく教えてくれるから、何とか頑張れていた。
「……よしっ♪」
ピンクの可愛い白衣を身に纏い、髪をアップにしてカーテンを開ける。
「彩ちゃん、お茶どうぞ♪」
「わーいっ♪ありがとうございますっ♪」
陽子さんに促されて椅子に掛け、冷えたグラスに手を伸ばした。
「彩ちゃんが来てくれる日は本当に助かるわ。」
「いえっ…!
そんな、あたしなんか全然微力です…!」
照れて俯くあたしを見て、陽子さんは優しく微笑んだ。
────村崎 陽子さん。
この歯医者で働く、25歳の歯科衛生士さん。
ふわりとした花のような優しい雰囲気は、まさに大和撫子。
落ち着いていて、それでいてとっても優しくて。
出会って間もないのに、
あたしはすっかり陽子さんになついていた。