DEAR 2nd 〜Life〜
…───朝岡さんの気持ちに何も返答出来ないまま、数日が過ぎた。
『明けましておめでとうございます、新年も──…』
テレビからは新年の挨拶が流れ、あたしはいつの間にか年が明けていた事を知った。
当然ながら、あたしは一人暮らし先に一人。
実家に戻る事もせず、外部からの接点を全部シャットアウトしていた。
…───マリア以外。
「────…おぇっ…うっ……───」
食卓には新年とは程遠い寂しい食事が並び、それさえも満足に口には出来ず戻してしまう日々。
「…彩、無理して食べなくていいからね…」
そのたびに背中をさすってくれるマリアに救われた。
「…ご…ごめん…
せっかく作ってくれたのに…」
「いいのいいの。
それより昨日よりは食べられたんじゃない?
良かった良かった♪」
「…マリア…」
どんなに吐いてもマリアは怒ったりしなかった。
前向きな言葉をいつも口にしてくれた。
────…どんな時も笑顔で。
「……ありがと……」
だからあたしもあんな地の底から這い上がれたんだと思う。
じゃなきゃ絶対に無理だった。
あそこまで、生きる事に必死にはなれなかった。
明日を見つめようって思わなかった。
───自分が……
“現実から逃げてる臆病者”だって
…───やっと悟れた。
────…ヒュウッ
寒風が頬を切る1月半ば。
「───…きゃははっ♪
パパ~!ママ~早くー!」
「ちょっとこら!マーくん危ないから走らないの!」
─────……
街行く家族連れ。
普通なら微笑ましい光景を見て、何故かあたしは笑えなかった。
「…」
振り返り、その家族を見てある一つの不安が渦巻く。
────…妊娠…。
当然ながら、あんな状態できちんとした避妊はしてくれなかった。
“絶対ない”とは思いながらも……。
決して否定出来ない現実に
「────…っ…」
あたしはまた前が見えなくなりかけてた。