DEAR 2nd 〜Life〜
「───ちょっと歩けへん?食後の散歩しよや♪」
「…あ、うん!」
返事をすると、朝岡さんはあたしからお弁当とバッグを持ち、余った片手を差し出した。
────サァァァッ…
山頂に吹く風は新鮮で。
街みたいに何も風を阻むものがないから、その分勢いもすごくて。
風に髪を揺らされ、少しだけ前を見つめた瞬間。
何気なく朝岡さんの広い背中に目がいって、後ろから抱き付いてしまいたい衝動に駆られた。
「…」
どうしようかな、抱き付いていいかな。
…なんて考えてたら、
━━━━━ボンッ!
「っ!?」
バカな事を考えてうつ向きながら歩いていたからか、抱き付くどころか派手に衝突。
「……あれ?ごめん。
打った?」
「…だ、だいじょぶ…」
鼻を押さえ、少々赤くなりながら笑うあたし。
うぅホントバカ……。
なんて鼻をさすっていたら
「───ほら見てみ?」
朝岡さんが一歩横へずれて、前に広がる景色を譲ってくれた。
「────わ…」
そこには、ただ一本だけ咲いている桜の木が在った。
周りの木はまだ何も咲いていないのに、この木だけ咲いてる……。
「────昔からさ、この木だけ狂い咲きしてるねん。」
「…狂い咲き…」
春にはまだ少し早い、肌寒い季節。
この木だけが先に春を勘違いして、他の木より先に咲いてしまう桜…。
「……まだおふくろが生きてる時さ。
よく春先とかここに遊びに来てて……
そんとき
“この木だけが早く咲く”
っておふくろが見つけてた。」
────…トンッ…
桜の幹に手を置く朝岡さん。
桜の木は朝岡さんを待っていたかのように、ヒラヒラと花びらを散らした。
「──…その年かな。
おふくろ、死んでもうて。」
「…え…」
「“来年もこの桜見たいね”って言ってたけど……
結局叶わずじまいやった。」
─────…キュッ…
幹に置いた手が丸い拳に姿を変える。
…あたしは何も言えなかった。
「───そっからかな~…。
この狂い咲きの桜見るたびに、生き急いだおふくろと重なんのは……」