DEAR 2nd 〜Life〜





「───ちょっと歩けへん?食後の散歩しよや♪」





「…あ、うん!」






返事をすると、朝岡さんはあたしからお弁当とバッグを持ち、余った片手を差し出した。








────サァァァッ…






山頂に吹く風は新鮮で。




街みたいに何も風を阻むものがないから、その分勢いもすごくて。




風に髪を揺らされ、少しだけ前を見つめた瞬間。





何気なく朝岡さんの広い背中に目がいって、後ろから抱き付いてしまいたい衝動に駆られた。






「…」





どうしようかな、抱き付いていいかな。





…なんて考えてたら、







━━━━━ボンッ!






「っ!?」





バカな事を考えてうつ向きながら歩いていたからか、抱き付くどころか派手に衝突。






「……あれ?ごめん。

打った?」





「…だ、だいじょぶ…」





鼻を押さえ、少々赤くなりながら笑うあたし。






うぅホントバカ……。





なんて鼻をさすっていたら







「───ほら見てみ?」





朝岡さんが一歩横へずれて、前に広がる景色を譲ってくれた。






「────わ…」







そこには、ただ一本だけ咲いている桜の木が在った。




周りの木はまだ何も咲いていないのに、この木だけ咲いてる……。







「────昔からさ、この木だけ狂い咲きしてるねん。」





「…狂い咲き…」






春にはまだ少し早い、肌寒い季節。




この木だけが先に春を勘違いして、他の木より先に咲いてしまう桜…。






「……まだおふくろが生きてる時さ。



よく春先とかここに遊びに来てて……





そんとき




“この木だけが早く咲く”



っておふくろが見つけてた。」







────…トンッ…






桜の幹に手を置く朝岡さん。




桜の木は朝岡さんを待っていたかのように、ヒラヒラと花びらを散らした。







「──…その年かな。





おふくろ、死んでもうて。」






「…え…」






「“来年もこの桜見たいね”って言ってたけど……



結局叶わずじまいやった。」







─────…キュッ…






幹に置いた手が丸い拳に姿を変える。






…あたしは何も言えなかった。








「───そっからかな~…。




この狂い咲きの桜見るたびに、生き急いだおふくろと重なんのは……」


< 450 / 475 >

この作品をシェア

pagetop