DEAR 2nd 〜Life〜
…───数分後。
朝のバスタイムを終え、キッチンには朝ご飯を作り始めるあたしがいた。
メニューは簡単。
ベーコンエッグにトーストと野菜スープ。
───あとは…
「あっ♪朝岡さんそれウサギリンゴ?」
「正解~♪」
「…ってか、朝岡さん皮とか剥げるんだね~…」
「おぅ、寂しーい一人暮らし歴長かったからね~。」
シュルシュルと上手にリンゴの皮を剥く朝岡さんの手先の器用さに、思わず感心。
朝岡さんの大きい手を惚れ惚れして見つめるあたしは、もしや俗に言う手フェチの疑いがないでもない。
だってあたしはあの手に昨日……。
・・・・・・・。
─────かぁっ…
思い出しては身体が熱くなる。
朝岡さんの体温や吐息。
表情や指使いまで、全部。
一つ一つ、まだ鮮明に覚えてる。
遠かった朝岡さんの存在が、すぐ近くに感じられた事。
離れてた四年分、すれ違った四年分、あたしを優しく包んでくれた事。
朝の始まりが、一緒にいる時間さえも……
全てが愛しく、尊く感じてくる。
「───…彩、めっちゃ眠たそうやな。」
朝ご飯を食べ終わり、まったりとベッドで寝転んでいた時。
朝岡さんは食後のコーヒーマグカップ片手に、ベッドで寝転ぶあたしの頭に触れた。
「……うん、お腹いっぱいでちょっと眠いかも…」
ウトウトと睡魔の波が押し寄せ、あたしの瞼は今にも落ちそうだ。
「……寝てえぇよ。
俺のせいも半分あるやろうし。」
「ふふっ…ほんとだぁ…。」
────…くしゃっ…
朝岡さんは目を細めて笑い、あたしの髪を優しく撫でた。
「…───彩。」
「…ん…」
「今週末、ライブあるからさ。良かったら来て?」
「…ライブ…」
「……うん。今度は俺が歌うとこ見に来てよ。」
「…うん…絶対行く…」
「……ありがと」
まどろみながらも笑って答えるあたしの手を握り、朝岡さんは穏やかに笑った。
───ねぇ朝岡さん…
もし……
もしね?
朝岡さんとこの先。
もう二度と逢うことが出来ないと分かっていたなら…
あたしはこの手を一生離しはしなかったのに…。