DEAR 2nd 〜Life〜
くるりと寝返りを打ち、今度こそと目を閉じた瞬間。
「───あ、そうだ…」
あたしは“ある事”に気付いて起き上がった。
────…カタッ…
マリアを起こさないように細心の注意を払って、ベッドからそっと降りる。
明日の服や用意が置いてある場所まで手探りで辿り着き、あたしはバッグの中身を開けた。
「…───あった…
よかった……」
あたしはホッと安堵の息を吐いて“それら”をまたバッグに戻した。
ちゃんと入れたかどうか不安になってチェックしといてよかった。
「───明日こそは絶対渡そう……」
────“明日”。
きっと笑顔溢れる日になるだろう。
楽しくてはしゃいで笑ってばっかりだろう。
…───そんな甘い未来が一瞬にして消え去るなんて知らなかった。
知っていたらきっとあたしはライブに足を運んでいなかっただろう。
“運命”ってのはいつも。
良くも悪くも偶然が重なり合うってこと。
きっと分かったようで分かっていなかったから。
────…チュンチュン…
そして迎える運命の日の朝。
「───彩~!!
もう置いていくよ~」
「わぁんちょっと待って~!!」
「だから早く寝なさいって言ったでしょ。」
「うぅぅ…」
ライブ仕様のカッコイイメイクモード・マリア様に呆れるように咎められ、あたしはバタバタと玄関を後にした。
「───おーいっ!
アヤヤ~!!大魔王~!」
「いっちゃん!おはようっ!」
「……あんた今さりげなくあたしの事大魔王って言ったわよね?」
「しーらなーいっ」
「あ?どこのどいつが言ったか言ってみろホラ」
「うわぁぁん!!!!!いたぃぃぃゴロぉーちゃぁぁん」
「ま、まぁ落ち着いて」
いっちゃん、マリア、ゴローチャンが騒いでる中。
「───おはよ。」
「おはよ…。」
運転席と助手席には、頬を赤らめながら笑うあたしと朝岡さんがいた。
「───行くか♪」
「うん♪」
────…ヴォン…
眩しい朝日の中、ゆっくりと車は運命に向かって進み始めた。
…───この日。
運命が真っ二つに分かれるなんて事、まだ誰も知らない。