DEAR 2nd 〜Life〜
「…ん…いつも一緒な。」
朝岡さんは太陽の光にキラキラ反射するブレスを嬉しそうに眺め、あたしに微笑んだ。
その笑顔が嬉しくて、あたしはやっと安堵の息をつく。
“いつも一緒ね”
どうしてこの時また約束などしてしまったのか。
どうしてあたしはまた朝岡さんとの約束を守れなかったのか。
現在【いま】のあたしにはもう何も分からない。
…けれどこの数時間後。
もうすぐそこまで確実な別れが忍び寄って来ていることを、あたし達はまだ知らない。
「──えっと…ここ?かな?」
朝岡さんにブレスを渡して別れてから、あたしは会場でチケット片手に座席を探しウロウロ。
「───Aの32…
あ、ここか…」
記載されてる座席を発見し、人混みを掻き分け掻き分けやっと着席。
「───…うっわぁ…!
ここ、特等席じゃん!」
着席するや否や大興奮。
あたしの閲覧席はアリーナ中のアリーナ。
ここならステージ真ん前だし、もしかしてもしかしたら朝岡さんと目が合ったり手が触れられたりとか…!?
……なんて要らぬ妄想に胸膨らませ。
「早く始まらないかなぁ~…♪」
今ここに座れている事にさえ、嬉しくてワクワクして。
だって朝岡さんのライブを生で見るのはどれくらいぶりだろう?
学園祭はマキに邪魔されたり負傷してしまったりと、アクシデント続きで声のみだけだったし。
こんな間近で、しかも付き合ってからのライブなんて初めてな訳で……。
「…えへ…、」
一人でニヤニヤと頬を緩ませ、今か今かとライブを待ち構えるあたし。
───…すると…
「───すいません、あの…」
ふいに横から声を掛けられ、あたしは振り向いた。
「…あ、ごめんなさい。
あたしAの31なんですけど…もしかして席一つずれて座られてないかなって…」
────わ…
そう声を掛けてきたのは、ふわっふわの柔らかい髪質が印象的な女の子。
いい香りと優しい色合いのワンピース。
極めてフランス人形みたいな愛らしい顔つき。
これを可愛い以外にどう表現すればいいんだろう、とあたしはジッとしばらく見入ってしまった。