DEAR 2nd 〜Life〜



「…………」




何だか朝岡さんに声を掛けるタイミングを逃し、しばらく立ち尽くして数秒。




───…思えば、



あたしはいつも笑顔の朝岡さんしか知らない気がした。




あんな風に、真剣に書物を読んでる姿なんか見るの初めてだ──…。





────………。



……何で……かな。



こんな風に朝岡さんを客観的に見てると、胸が一気にザワつくの。




……あんな朝岡さん、初めて見るから?



だから胸が慣れてないの?



だからこんなに息苦しいの?




───…朝岡さんが書物を棚に戻そうと、手を伸ばしたその時。





「────……?


─────…彩!」





──────ドキッ!




朝岡さんはあたしを見つけると満面に明るく笑い、にこにこしながら近付き、





「……どうしたん、そんなとこで突っ立って?」




「………え?えーと…

朝岡さん真剣に本読んでたから……

何か声掛けていいのかなって──……。」




よく分からない感情を隠すように、慌てて言葉を並べる。




「……あー、ごめんごめん。

つい気になるのあったら読みふけってまうからなぁ……。」






「……………


───朝岡さん……」




「ん?」




「…………。


ううん、何でもない……。」





「───?

変な彩やなぁ。



ほら、あっちに席取ってあるから行こう?」





朝岡さんはそう言って、笑顔であたしの背中を押した。







───…ねぇ朝岡さん。



……今、ね?





“………あたし、うまく喋れてる?”




本当はそう聞きたかったの。




……でもね、妙に胸が苦しいから。



朝岡さんにどんな顔をすればいいのか分からないんだ。



……あたし、今まで朝岡さんにどんな顔してた?




いつもどんな風に言葉を交わしてた?



どんな風に、いつもあなたと接していたのかな…?







「─────……」







………忘れちゃった。




忘れちゃったよ──…。



< 56 / 475 >

この作品をシェア

pagetop