その手で触れて、そして覚えて。
玄関に入りドアを閉めると、颯生くんはすぐにわたしを抱き締めた。
「颯生くん、、、」
わたしを抱き締める颯生くんのその腕は微かに震えていて、ギュッと強く力がこもっていた。
「ありがとう、、、颯生くん。」
「七花さん、、、俺、不安です。七花さんのこんな近くに冬司さんが居るなんて、、、七花さんが、冬司さんのところに、行っちゃったらどうしようって、、、」
「それは大丈夫。わたしは、冬司を恋愛対象として見たことないから。」
「でも、冬司さんは違います。冬司さんは、、、七花さんのことが好きですよ。」
わたしは颯生くんの腕を掴んで身体を離すと、颯生くんの頬に手を触れた。
「わたしが好きなのは、颯生くんだよ?わたしのこと、信じられない?」
わたしがそう言うと、不安気だった颯生くんの表情が緩んで、「七花さんのことは信じてます。」と言い、再びわたしを抱き締めると、唇を重ねた。
そして、颯生くんは帰る前に「明日から毎日、七花さんを家まで送ります!やっぱり心配なので!」と言ってから帰って行った。
颯生くんは心配性だ。
でも、わたしが颯生くんの立場だったら、わたしもきっと不安になっただろうな。
溢れんばかりの颯生くんの愛情がわたしを満たして、愛されることに無縁で仕事に生きようと言っていた自分がまるで嘘のようだ。
わたしの頭の中は颯生くんでいっぱいで、でも明日からはまた仕事が始まるから気持ちを引き締めないと!と自分に言い聞かせた。
会社で間違えて"颯生くん"って呼ばないように気を付けないとなぁ。