その手で触れて、そして覚えて。

あの日から冬司は姿を現すことはなくなった。

わたしはというと、いつもと変わらない日常を送っている。

ただ足りないのは、颯生くんの存在だけ。

颯生くんが帰って来る予定は、来週の金曜日。

わたしは毎日、カレンダーを見ては自分の中でカウントダウンをして、あと1週間かぁ、、、と溜め息をついた。

休日の土曜日、わたしは布団の中で颯生くんと触れ合って、愛し合ったあの日のことを思い出していた。

颯生くんの大きな手、綺麗な頬に整った輪郭、髪の毛の感触。

唇の柔らかさ、首筋のニオイ、適度に筋肉がついた腕に割れた腹筋。

キスの時に見える長い睫毛に、綺麗な瞳。

そして、颯生くんの温もりに胸に耳をあてると聞こえる鼓動。

わたしが手を伸ばすと、抱き締めてくれる颯生くん。

わたしは颯生くんが居ない天井に向けて手を伸ばした。

早く颯生くんに会いたい、、、

すると、インターホンが鳴った。

えっ?誰だろう。

何も注文してる物なんて無いから、宅配便ではないよね。

そう思いながらも布団から起き上がり、部屋着のまま玄関に向かい、わたしはドアを開けた。

すると、そこにはスーツケースを片手に持つ、颯生くんの姿があったのだ。

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