契約の愛で結ばれたのは、まさかの敏腕CEO!?~独占欲滾るスパダリは極上溺愛で囲い離さない~
 足をもっと速く動かそうとするけれど、身体が追いつかない。
 あっという間に足がもつれてしまう。

(だめっ、転ぶっ……!)

 ドンッ――。

「きゃっ!」

 手を前に出した瞬間、地面ではない柔らかな感触がした。誰かにぶつかったようだ。
 茉莉花は反動で尻もちをつく。

「おっと失礼。大丈夫ですか? ……おや、この間の」

 見上げると、この間の『星空』の店主がいたのだ。

「お顔が真っ青ですよ。また何かあったのですか?」

 心配そうに手を差し伸べる店主。
 だが茉莉花は身体は恐怖で動かない。言葉もうまく出せなかった。

「あ……」


 背後から誰かが走ってくる足音がする。
 あの男だ。

(もう駄目っ)

 近づいてくる足音を聞いた瞬間、恐怖の感情が茉莉花の頭を支配した。
 男から逃れるようにギュッと目を閉じる。

(助けて……!)

 心の中で叫んでも、声にはならなかった。

「えーっと、大丈夫じゃなさそうですね。ちょっと失礼します」
「……!」

 店主の柔らかい声とともに、茉莉花の身体がふわりと浮かぶ。

「とりあえず店の中に入りましょう。もう大丈夫ですよ」

(お店?)

 店主の声に茉莉花がそっと目を開けると、そこには先日訪れた夜喫茶『星空』があった。
 いつの間にか喫茶店の前まで来ていたのだった。


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