幼なじみは、私だけに甘い番犬
(3年前、姿を消す前夜の回想シーン)
あの日は自室のベッドの上で横になりながら、琴乃から借りたマンガを読んでいると、コンコンコンと部屋のドアがノックされた。
「何~?」
母親が、用があってドアを叩いたのだと思ったのに。
「椰子、……俺」
「玄希?……いいよ、入って」
いつもならノックもせずに勝手に入って来るくせに。
あの日は、珍しくノックをして入って来た。
お風呂上りなのか、いつも軽くアレンジされている髪がさらりと垂れている。
『艶やかで綺麗な黒髪だなぁ』だなんて見惚れていると、後頭部の髪を手で撫でながら私がいるベッドへと腰を下ろした玄希。
つられるように私もベッドに座り直すと、チラチラっと視線を寄こす彼。
「何か、用があって来たんじゃないの?」
いつもなら高圧的な物言いで、あーだこーだと言う彼が、珍しく言葉を選んでいるようで。
それがちょっと気になって、顔を覗き込むように頭を傾げた、次の瞬間。
目の前にラッピングされた箱が差し出された。