俺様同期の執着愛
 心がぐちゃぐちゃになって、涙があふれてきた。
 私が泣いてしまったことに驚いた柚葵は、我に返ったように私から離れた。

「ごめん」

 柚葵のその言葉に、私の胸がずきりと痛んだ。

「……なんの、謝罪?」
「いや、その……同意もなくキスしたこと」

 柚葵は急に理性が戻ったみたいな、冷静な言葉でそう言った。
 それが無性に哀しくて、私は震え声を出した。

「謝らないでよ」
「でも」
「……平気だから」

 謝られたら、なかったことになってしまう。
 本当は嬉しくて、悦びに震えてしまうほど溺れてしまったことを、彼が知ったらどうなるだろう。

 嫌われたくない。
 柚葵との関係を壊したくない。

「私こそ、ごめん。ちょっとびっくりしちゃって」
「そうだよな。俺、どうかしてるな。完全にセクハラじゃん」
「バカ」

 それ以上、言わないで。
 柚葵が冷静になればなるほど、私は自分の心を保っていられなくなる。

「あの、今日はちょっと、疲れちゃったみたいだから、帰るね」

 もしかしたら、帰るなって言われるかもしれない。
 いつもの柚葵なら、そう返すだろう。
 けれど、今日は違った。

「悪かった。帰れるか?」
「……子どもじゃないんだから」
「駅まで送って……」
「いい。大丈夫。じゃあ」

 私は逃げるように彼の部屋を出た。

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