俺様同期の執着愛
 柚葵の大きな手の感触を久しぶりに感じる。
 以前は割り切っていたせいか、心のどこかで彼の深い場所に入り込まないように線引きしていた。
 だけど今は違う。
 もっと、柚葵のことを知りたいと思う。

「こんなの、誰かに見られたら……」
「暗いから見えない。俺の背中を壁にしておけばお前は見られないだろ」
「そうだけど、なんか……恥ずかしいな」

 しばらく人がいたから少しドキドキしたけれど、彼らは建物内に入っていって誰もいなくなった。
 少しほっとする。
 私が目線を真上に向けると、柚葵はこちらを見下ろしながらわずかに口角を上げた。

「なあ、もっと恥ずかしいことする?」
「えっ……」

 柚葵は優しく微笑んだ。
 いつもみたいにイタズラっぽい笑顔じゃなくて、まるで愛おしいものでも見るように。
 その対象が私だと悟ったら、もっと恥ずかしくなってしまった。

「ゆ、ず……ひゃっ」

 柚葵が私の耳朶を指でさわさわ撫でた。
 同時に彼は私の反対側の耳もとで唇を近づけてそっとささやく。

「綾は好きだなあ、これ」
「やっ……やめてよ」
「やだね。可愛いからやめない」

 くすぐったい。なのに、ぞくぞくする。
 体の奥から熱が湧いてくる。
 おかげでちっとも寒くないけれど、それどころか燃えるほど体が熱くなってしまって、かえって雪が心地よく感じた。

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