シンママ派遣社員とITコンサルの美味しい関係

第二話「新しい日常」

 朝9時。外資系IT企業、ソリッド・テクノロジーズのオフィスには、すでにキーボードを叩く音と英語交じりの会話が飛び交っていた。
 美咲はデスクに座ると、ノートパソコンを開き、メールのチェックを始める。
 スケジュールの変更依頼、会議資料の準備、他部署からの問い合わせ――今日もやるべきことが山積みだ。

「おはよう、美咲」

 明るい声が飛んできた。同じ派遣社員で、金融インダストリー部のグループセクレタリーを務める清水友紀子が、コーヒー片手にやってくる。

「友紀子、おはよう」

 美咲は軽く微笑み、手を止めることなく、重要なメールにフラグを立てる。

「今日も忙しい?」

「うん、いつも通り。でも、もう慣れたわ」

「さすが、美咲は仕事できるもんね~。私も見習わなきゃ」

 友紀子は冗談めかして言いながら、自分のデスクに向かう。美咲は軽く笑い、手帳を開いた。

 朝のルーティンを終えると、流通インダストリー部部長の鷲尾俊明のデスクへ向かう。

「おはようございます、鷲尾部長。本日の予定をお伝えします」

「ん? ああ、頼む」

 鷲尾はコーヒーをすすりながら、美咲に目を向ける。

「今日は、10時から11時まで401会議室でグローバルリテール向けの提案レビュー、15時から16時まで411会議室でリソースマネージャーと来期のトレーニング予算の会議があります」

「ありがとう」

 いつものように淡々とした返事。でも、毎朝美咲に予定を確認するのが彼のルーティンになっていることは、美咲もよく分かっていた。

 デスクに戻ると、また新しいメールが届いている。次々と処理しながら、美咲はふと考えた。

 シングルマザーになって3年。最初は不安もあった。でも、こうして働きながら息子を育てる日々が、今ではすっかり自分の生活になった。

 離婚してからの日々は大変だった。でも、後悔はしていない。

 今日もまた、忙しい一日が始まる。
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