シンママ派遣社員とITコンサルの美味しい関係
第三話「新たな出会い」
午前10時を少し過ぎたころ、美咲の席に人影が近づいた。
「エマージングテクノロジー部の瀬尾です」
落ち着いた低めの声。
顔を上げると、すっきりとした顔立ちの若い男性が立っていた。この会社の若手社員にしては珍しく、ラフなビジネスカジュアルではなく、しっかりとスーツを着こなしている。シャツの襟元まできちんと整えられ、全体的に隙のない印象を受ける。
端正な顔立ちと切れ長の目がクールな雰囲気を醸し出していた。
「佐伯美咲です。グループセクレタリーをしています」
美咲が軽く会釈すると、彼――瀬尾亮介も小さくうなずいた。
「流通インダストリー部のプロジェクトに技術リードとして入りました。会議の調整などでお世話になるかと思います」
エマージングテクノロジー部は最新技術の調査と導入を支援する部署。そのメンバーが技術リードをするということは、最新の技術を扱う難しいプロジェクトであることは想像がつく。
「そうなんですね。よろしくお願いします」
一通りの挨拶を交わしたものの、瀬尾はそれ以上の会話を続けるでもなく、短い言葉だけを残してすぐに去っていった。
クールな人……でも、話し方は無駄がなくてスマートだわ。
美咲はそんな印象を抱きながら、彼の背中を目で追った。
昼休憩の少し前、美咲がメールを整理していると、再び瀬尾が近づいてきた。
「佐伯さん」
「はい?」
美咲が顔を上げると、瀬尾は手にスマートフォンを持っていた。
「会議の調整とか、直接やりとりできたほうがいいこともあるかと」
そう言うと、画面を見せる。そこには、彼の連絡先が表示されていた。
「えっ、あ、ありがとうございます」
美咲は少し驚きつつも、自分のスマホを取り出して連絡先を交換する。
「浜田さんを通すのが基本だとは思うんですが、念のため」
その言葉を残し、瀬尾は再び去っていった。
この会社では新しいプロジェクトのたびに、初めて関わる人がいる。
瀬尾亮介も、そんな一人に過ぎないはずだった。
だが――この出会いが、彼女の生活に新たな風を吹き込むことになるとは、このときの美咲には知るよしもなかった。
「エマージングテクノロジー部の瀬尾です」
落ち着いた低めの声。
顔を上げると、すっきりとした顔立ちの若い男性が立っていた。この会社の若手社員にしては珍しく、ラフなビジネスカジュアルではなく、しっかりとスーツを着こなしている。シャツの襟元まできちんと整えられ、全体的に隙のない印象を受ける。
端正な顔立ちと切れ長の目がクールな雰囲気を醸し出していた。
「佐伯美咲です。グループセクレタリーをしています」
美咲が軽く会釈すると、彼――瀬尾亮介も小さくうなずいた。
「流通インダストリー部のプロジェクトに技術リードとして入りました。会議の調整などでお世話になるかと思います」
エマージングテクノロジー部は最新技術の調査と導入を支援する部署。そのメンバーが技術リードをするということは、最新の技術を扱う難しいプロジェクトであることは想像がつく。
「そうなんですね。よろしくお願いします」
一通りの挨拶を交わしたものの、瀬尾はそれ以上の会話を続けるでもなく、短い言葉だけを残してすぐに去っていった。
クールな人……でも、話し方は無駄がなくてスマートだわ。
美咲はそんな印象を抱きながら、彼の背中を目で追った。
昼休憩の少し前、美咲がメールを整理していると、再び瀬尾が近づいてきた。
「佐伯さん」
「はい?」
美咲が顔を上げると、瀬尾は手にスマートフォンを持っていた。
「会議の調整とか、直接やりとりできたほうがいいこともあるかと」
そう言うと、画面を見せる。そこには、彼の連絡先が表示されていた。
「えっ、あ、ありがとうございます」
美咲は少し驚きつつも、自分のスマホを取り出して連絡先を交換する。
「浜田さんを通すのが基本だとは思うんですが、念のため」
その言葉を残し、瀬尾は再び去っていった。
この会社では新しいプロジェクトのたびに、初めて関わる人がいる。
瀬尾亮介も、そんな一人に過ぎないはずだった。
だが――この出会いが、彼女の生活に新たな風を吹き込むことになるとは、このときの美咲には知るよしもなかった。