いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
八月下旬。留学期間が終了し、麻衣子は一年学んだ学校を卒業した。クラスメイトは更に専門的な勉強を続けるものもいれば、フローリストとして仕事をはじめる者や麻衣子のように帰国する者もいる。
寮を退去する前日。麻衣子は亜里沙との最後の大学構内の散歩をしていた。緑の芝に覆われたなだらかな坂が続き、頭上には穏やかな空が広がるすっかり見慣れた牧歌的な光景だ。
「明日でお別れなんて、信じられないわね」
亜里沙が寂しそうに言う。彼女は麻衣子同様、フローリストとして働く資格を取得したが、更にプロフェッショナルな勉強を続ける。
「うん、寂しくなるね」
麻衣子は心からそう言った。慣れないことばかりで戸惑っていた麻衣子に声をかけて、友人になってくれた彼女には深い感謝を感じている。大変だった勉強も支え合って乗り切った。裕斗との交際を伝えたときも自分のことのように喜んでくれた。
「日本に着いたら連絡してね」
「もちろん」
「麻衣子がお店をオープンするときは、かけつけるわ」
亜里沙が力強く言う。
「ありがとう。亜里沙のお店のときも必ず行くね」
きっと亜里沙の方が早く叶うだろう。
一年間の間に、麻衣子の夢は変化していた。自分の店を持ちフローリストとして働きたいと思っていたけれど、今はこれからも裕斗と共に生きていきたい。
(どんな形になるかは分からないけれど、彼の側で花の仕事を続けられたら)