いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 忘れようとしていた裕斗との思い出が浮かんでは消える。

 幸せだった日々が懐かしく切ない。

 彼との繋がりは何もかも失ったと思ったのに……。

 ずっと我慢していた反動だろうか、なかなか涙が止まらない。

 気が済むまで泣いてから、麻衣子は子供がいるとは思えないまだぺたんこの腹部に手を添えた。

 ここに彼との子供がいるなんて信じられない。

 でもこれは現実なのだ。泣いていてもなにか解決しない。

 裕斗と別れると決めたのは、麻衣子自身なのだから。

(しっかりしなくちゃ)

 麻衣子は涙をごしごしと拭い、立ち上がった。


 
 近くの産婦人科に行き検査をした結果、妊娠八週だと判明した。

 麻衣子は病院でもらったエコー写真を眺め微笑んだ。

 命が芽生えたのだとこうして実感すると、不安よりも頑張ろうという気持ちが勝ってきた。

「しかも双子なんだもの……どうしようって泣いてる暇なんてないよね」

 独り言は自分自身への戒めだ。

 麻衣子の勝手で父親を知らずに育つ子供たち。

 それでも寂しくならないように精一杯頑張って育てよう。

 麻衣子は、エコー写真を眺めながら、そう決心したのだった。
 
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