いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
「どうしたの?」
「だって、頑固なお姉ちゃんが私の言うことを聞くなんて」
「頑固って……でもそうだよね。自分でも頑なだなと思うことがある」
よくないところだと分かっているけれど、長年培った性格だ。なかなか変えるのが難しい。
「責任感があって、しっかりしているのはお姉ちゃんのいいところだと思うよ。なんでも自分で決めようとするところがある。それは私のせいでもあるよね。全然頼りなかったから」
「そんなことないよ」
「ううん。ずっとお姉ちゃんに甘えていた。お母さんの事故のときも、すべて任せてしまったよね。でも私も少しはしっかりしたから、これからは自分のことを一番に考えてほしいな」
「ありがとう……いつの間にか、絵麻はしっかりしたんだね」
麻衣子が微笑むと、絵麻がしみじみ言う。
「そりゃそうだよ。私だってもう二十八歳になるんだもの」
「私は三十か……時間が流れるのは早いよね」
「赤ちゃんで寝てばかりだった三つ子が、今じゃ手に負えないほど元気だものね」
「子供の成長はもっと早いね……」
麻衣子はそう呟くと、重苦しい気持ちになった。
(私の勝手で裕斗さんは自分に子供がいることすら知らない)
それが最善の決断だと信じていたが、今更のように罪悪感がこみ上げる。
(裕斗さんに真実を伝えるべきなのかな)
けれど、彼にとっては知らない方がいい場合もある。例えば将来を考えている相手がいた場合、子供たちの存在は負担になるだろうから。
まだ何が正解なのか分からなくて、彼にどう向き合っていいのか答えが出ない。
ただ、久々に会った彼の姿が、記憶に鮮やかに焼き付いていた。