いきなり三つ子パパになったのに、エリート外交官は溺愛も抜かりない!
 あまり大きな声を出すと、三つ子が驚いてやって来てしまう。

「そんなことあるわけないよ。だって、あれからもう四年以上経っているんだよ」

 裕斗と別れて四年の間、様々なことがあった。

 政治家からの圧力を不安に感じながら引っ越しをして、妊娠が発覚して、三つ子だと知らされて。二年前には母が亡くなった。一時は回復に向かっていたけれど、再び脳梗塞を発症して、そのまま目覚めることがなかったのだ。

 悲しみに浸る間もなく三つ子を育てて……子供たちとの生活は幸せなことが沢山あったけれど、辛くて苦しいことが山のようにあった。そのとき裕斗はいなかった。絵麻と一緒に乗り越えてきたのだ。

 華々しい暮らしをしているように見える彼にだって大変なことは有っただろう。でも麻衣子は何も知らない。

 それが今のふたりの距離だ。

「……昔とは違うよ。時間も距離も空いていて、私たちには共有するものが何もないんだから」
「でも、あの子たちがいるじゃない」

 絵麻が真剣な目をして麻衣子を見つめた。

「あの子たちにとってはたったひとりの父親なんだよ? 本当にお姉ちゃんの一存で黙ったままでいいの?」

 絵麻の声は抑えたものだけれど、麻衣子の心に深く突き刺さるものだった。

 彼女が言っていることが正論だとは分かっているのだ。

「それに、お姉ちゃんだって、まだ裕斗さんが好きなんでしょう?」
「それは……」

 絵麻の問いかけに応えられず麻衣子は口ごもった。

「お姉ちゃんの気持ちも分かるけど、次に会うときにちゃんと話し合った方がいいよ。子供たちのためにも」
「……うん、わかった」
「お姉ちゃんが躊躇う気持ちは分かるけど、でも……え? 分かったって本当に?」

 麻衣子が素直に頷いたのが意外だったのか、絵麻がきょとんとした顔をする。
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