好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~
ベンチに座ってスマホをいじっていると、走る足音が聞こえた。



ぱっと顔を上げると、小糸ちゃんがこっちに向かって走ってくる。



そして、俺の目の前でつまずいた。



おっと…。



小糸ちゃんの腕を引いて抱き留める。



セーフ。



小糸ちゃんは「へへっ」と笑った。



それから「風里先輩!」と言ってカバンをガサゴソし始めた。



「じゃーん!」

「お」



見せられたのは、学年順位の載ってる成績表。



「前回200位代だったのが今回100位代に上がりましたー!」

「おおー! がんばったね」



俺はそう言ってぱちぱちと拍手。



小糸ちゃんは誇らしげだ。



「これでご褒美くれますか?」

「いいよ」

「じゃあ…あれ!」



小糸ちゃんはそう言って公園に設置してある掲示板を指さした。



掲示板には、『夏祭り』の文字。



「あれ連れてってください!」



元気よくそう言う小糸ちゃん。



ん?



えーっと…つまり、2人で夏祭りってこと…?



俺が戸惑ってたら、小糸ちゃんが慌てて「あ、2人が嫌だったら友達連れてもいいです!」と付け足した。



嫌なわけじゃないけど…。



ほら、思わせぶりはしないように気を付けてるからさ…。



「穂高とかも行きたそうだったから、明莉ちゃんも誘って4人で行く?」

「あ、そうですね! そうしましょう!」



小糸ちゃんがちょっとがっかりしてるように見えるけど…。



うん、しょうがないしょうがない。



ごめんね?



本当は2人でもいいんだけどさ…。



余計な火種はつけないでおくよ。



それから穂高に声をかけたら、女の子と夏祭りに行けるとすごく喜んでた。



良かった良かった…。



うん、俺も楽しみ!
< 16 / 351 >

この作品をシェア

pagetop